職員室の声

東後先生(仮屋)

2020-02-14

プロ野球の名選手であり名監督でもあった野村克也氏が死去した。報道を見て感心するのは野球界で彼の薫陶を受けて育った選手、監督、コーチがいかに多いかということである。良き師にめぐり会うことは人生最大の幸福かもしれない。

幸運なことに私にもそんな師との出会いがある。私の年代の英語学習者なら誰もが知っている東後勝明先生である。1972年4月から1985年9月までNHKラジオの「英語会話」で講師を務めた方で、ネイティブより美しい英語を話すと言われ、我々英語学生にとっては神様みたいな先生だった。私もそんな「英語会話」の熱心なリスナーで、「東後先生の下で英語を学びたい」その思いで高校時代そして苦しい浪人生活を乗り切り、夢を実現することができた。入学式後のオリエンテーションで先生に初めてお会いした日のことは今でも鮮明に覚えている。番組同様、英作文の講義でも一番前の席を陣取って、先生の言われることを一言も逃すまいと聞き入った。授業中に英語で発言すると

“Your pronunciation is perfect, Mr. Kariya!  Where did you learn it?”

今思うとこれは単なる社交辞令だったのだろうが、東後先生にそう言われると天にも昇る心地だった。13年半続いた名番組は私が大学2年の時、先生にとっては二度目の英国留学で幕を閉じる。最後の講義後、先生に「僕らの在学中に必ず大学に戻って来てください。」とお願いした。「そうなるよう、ベストを尽くすよ」と言って英国へ旅立たれた。

残念ながら先生の講義を受けられたのはその一年だけだったが、先生の下で英語を学んだ一年は今でも私の誇りであり宝物である。東後先生は昨年この世を去られたが、私のスマホには先生が担当されたラジオ「英語会話」の最終回の音声が入っている。“Keep up your enthusiasm.” (情熱を持ち続けなさい)という先生の励ましの声が今でも聞こえてくる。そして「仮屋、まだまだ英語の勉強足りないぞ!」という声も。

(文責仮屋)