職員室の声

十年一昔?(上猶)

2021-03-09

 10年前、この「職員室の声」欄に、東日本大震災について書いたことを覚えています。あっという間の10年間だったのか、まだ10年しか経っていないのか。私たちが「当たり前のありがたみ」を実感した、2011年3月11日。忘れてはならない、また忘れることのできないことだから、マスメディア同様に私がここで取り上げる必要もないと思いますが、あえてこの場を借りて当時のことを思い起こしてみたいと思います。

日本中が悲しみに包まれたあの日、世界は日本人の冷静さと互いを気遣う振る舞いに対して高い評価をしていました。米ロサンゼルス・タイムズ紙では、日本人の想いやりある行動を次のように評価していました。「ホテルの従業員が『停電により夕食を準備できない』と代わりに緊急用のうどん10皿を持ってくると、ロビーで避難していた50人の客は我先にとうどんに駆け寄るどころか、誰もが他の客の空腹を心配して列の後ろへと10皿のうどんを回し、譲歩のリレーが続きました。」

中国や韓国のネットでは、驚くほど落ち着き秩序を守る日本人の姿に「私たちも学ばねば」「自分の国では考えられない」など、称賛驚嘆の声が上がりました。

モルディブでは、2004年に起きたスマトラ沖地震で日本人に救われたと感謝の意を表し、次は「恩返しがしたい」と、多くの人が募金しました。人口31万人の国民の多くは貧しく、約4600万円の義援金は記録的なものでした。お金が出せない人は、せめてもの恩返しとしてツナの缶詰を持ってきました。モルディブ国民が皆、この思いを胸に日本に祈りを捧げました。合い言葉は「日本に恩返しを」でした。

私たち日本人が世界に誇れるものは最先端技術や豊かさばかりではなく、このような「絆」ではないでしょうか。

今は世界的な新型コロナウイルス感染拡大のため、日本のみならず世界中がかつてない厳しい試練にさらされています。あの震災から立ち上がってきた日本人だからこそ、感染者、医療従事者その他に対する良識ある言動もとれるはずだと思います。

小さな思いやりが人から人へとつながり、国境を越え、世界の絆を深めていけばと思います。

あともう少しで年度が終わるにあたり、またこの十年という節目の時だから、授業においても、震災の教訓を通して考える時間を、子供たちに与えようと思います。

 

 

(文責:上猶)